イワケーン日記

何かを巻き起こす良いハリケーンでいたい。建築・インテリアデザインの仕事がメインです。このブログに書いているのは正しい意見ではなく、「僕が感じたこと」の記録です。@iwakeen1017

名著「誰がアパレルを殺すのか」を読んでみた。

こんにちは。イワケーンです。

今日はね、さらっと読書感想のブログです。

最近はお金のことばかりでしたので箸休めに(笑)

前々から気になっていた「誰がアパレルを殺すのか」を読んでみました。

 

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出版されたのは2017年なので結構前ですね。当時はアパレル業界の状態を赤裸々にルポタージュしたということで大きな話題を呼んだ書籍です。

↓こんなカバーです。左が通常本(¥1,660)、右側が文庫本(¥880)  

 

 

 

当時は何となくパラパラとめくって、「アパレルって大変そうだな」と思うくらいでしたが、きちんと読んでみようとこの外出自粛に決意して再読しました。

 

書籍のざっくりした内容は下記のような流れで展開します。

・アパレル業界は低迷している、このままでは死んでしまう

・アパレル業界を殺すのは誰なのか

・殺すも生かす(活かす)も、アパレル業界の人間次第である

 

著者らは、国内アパレルを代表する大物から末端で服を捌く人々のインタビューを重ねて、1900年代から2020年にかけての歴史を照らし合わせながら日本のアパレル低迷を紐解く。

 

結論から示すと

「アパレルを殺すのは、アパレル業界であった」ということでした。

これは意外な答えでした。何となく、ITで時代が大きく変わってしまったからとか、そういう内容かと思っていたのですが、それは現在の状況を招いた一因にすぎないと本書は示唆しています。

 

「過去の成功体験から、日本のアパレルはブランディングの意味を間違えて時代を過ごした。」これが一番納得のいく言葉でした。

ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション会長の尾原蓉子(おはらようこ)さんは、日本がアパレル不振から抜け出せない理由について以下のように語っています。

 

日本のアパレルは高度経済成長期に流行の既製品を販売したことで急成長した。当時は価格が不安定とみられていた「洋服」をビジネスにすると高利益が出るということが発覚した。デザインしたり産地に行って商品を企画開発しなくても、海外とのライセンス契約を結んで日本に持って来れば良い、それが当時のビジネスのスタイルだった。

さらに1970年代に海外輸出が加速して利益が大きくなっていった。しかし、利益が出ているにも関わらず、自社でブランドやデザイナーを育てたり、生産拠点を整備したりすることもなかった。本質的な意味でブランドやデザイナー生産拠点を長期的な目線で育ててこなかったことが一番の理由だ。(一部省略)

 

確かに、頷ける理由です。ほとんどの製品は中国やベトナムで作られたもので、どこのブランドも似たようなデザインばかり、そこに価値を感じることはなく、それでもブランドの哲学やコンセプト、デザイナーを無しに作り続けた結果が現状を生んだ。

そのため、きちんとブランディングやデザイナーの育成を行ってきた海外のアパレルブランドは業績が不振に陥っていません。

 

この状況を打破するには、やはりアパレル業界が変化するしかありません。

現在は、大衆から「個」の時代へと推移しました。そのため、よりニッチなブランディングや、パーソナライズに特化したアパレルが必要とされています。それが一体どこにあるのか、大手含め業界の人は、手探りに探している。

 

というような内容の本でした。

 

感想としては

①アパレル業界以外にもあり得ること

②在宅勤務で全ての業界に変化が問われる

③今こそ学べる老舗のブランディング

この3点です。

 

①アパレル業界以外にもあり得ること

要するに、「業界ではそれが普通でしょ」という概念に怠けていたら、とんでもない状態を招く結果になったということです。これは、アパレル業界だけではないと思います。アパレルブランドという概念はここ100年くらいの間に発生したことなので流通が早く、そのため問題も顕在化しやすかったのではないかと思いました。

そのため、昔からあるような古い業界はもっと大きな問題が出てきそうですね。

 

②在宅勤務で全ての業界に変化が問われる

更にコロナウイルスで、全業界のビジネスモデルの体制に変化が問われていると思います。

流通や経済が止まってしまっても、人間の興味や好奇心、欲求は止まることはありませんから何かしら活路はそれぞれの業界で見出されると思っています。かなり他力本願的な考えで恐縮ですが、この機会に、色んな業界の変化を見て、見極めるきっかけかもしれません。

 

③今こそ学べる老舗のブランディング

本書で「アパレルのブランディングを間違えた」とありますが、そもそも日本には巨大なブランディングがあります。それは「老舗」と呼ばれる店舗や企業です。何百年も前からあるということは他のウイルスや世界恐慌も自然災害も経験済みです。けれど、それらによって老舗がなくなることはありません。これは国が独立してから日本に比べて浅いアメリカにはないブランディングです。

 

老舗ブランドは、個々の哲学やコンセプトを築き、ブランドに合わないことは徹底的にやらない。こうしたクローズとも思えるマインドで保たれています。どちらかというと日本人の方が得意としてきた文化ではないでしょうか。今一度、アパレル業界だけに止まらず、各業界で老舗ブランドの考え方を深く理解するタイミングではないか、と思った。

 

とりあえず、何百年も前からある老舗ブランドの哲学を調べてみましょう。

 

今日はこんなところで。